【読書感想文】江戸時代にも母乳が出ないことを悩む人は大勢いた「江戸の乳と子ども」の感想

里帰りから帰ってきて家事やら子供の世話にてんてこまいで、結局2ヶ月もブログを放置、言葉通りの3日坊主と相成りました(笑)

そろそろ生活ペースが落ち着いてきたので、少しずつ更新をしていきたいと思います。

 

軌道に乗らなかった母乳育児

さて、産後から里帰りしてきてなかなか軌道に乗らなかったことの一つが「母乳育児」

乳首に吸いつかない、あげてもすぐ泣く、おっぱいが張る感じが余りないという感じで、ミルクに頼らざるを得ませんでした。

と同時に、ミルクがない時代はどうしていたんだろうという疑問もありました。

仮に今が戦争中や戦国時代、もっと遡って原始時代では母乳が出ない=子どもの死であり、時代が時代なら我が子は生きられなかったのではないか?と。

そんな中、巡り合ったのがこの本でした。

女性から分泌されるが赤子の命綱だった江戸時代、母親の出産死や乳の出が悪い場合、人びとは貰い乳や乳母を確保するため奔走した。乳をめぐる人の繋がりを探り、今、子どもを育てるネットワーク形成の意味を考える。

私の疑問に明確に答えてくれる本でもあり、いのちの重さや、今の恵まれている環境や育児について考えることができた本でした。

乳が出なくて困る母親は江戸時代にもたくさんいた

いたんです。

しかも、今より医学も進歩しておらず、栄養状態のよくない江戸時代だからか、珍しいことではなかった模様。

お乳が出ないのは私だけじゃなかった…と胸を撫で下ろしました(乳だけにw)。

お乳のでない奥さんがいる家庭は、父親が乳をもらいに町中を奔走してお乳をもらったり、母乳代わりの乳の粉というものを飲ませたりしたらしい。

都市部に限っては、乳母を雇って乳をあげており、乳母を斡旋することで生計を立てている「口入屋」という家もあったそうで、それなりに需要があったことが伺えた。

お産で命を落とす母親も多かったことから、地域の他のお母さんや乳母の乳、乳の粉などをあげ、「母乳」にこだわらず子供の命をつないでいたそうな。

めちゃくちゃ大変だっただろうな…。

出産はやっぱり命がけだった

出産が命がけの時代だったということが知れたこともこの本を読んだ収穫でした。

「逆子や多胎など困難なお産で、お母さんが頑張りきれなかった時はどうしていたんだろう」という疑問があったが、想像通り、亡くなっていたらしい。
昔は出産適齢期の女性の死因の半数近くがお産によるものではないかとも考えられたそうで。

現代では、出産で亡くなる方っていうのはあまり聞かないし、たとえば仕事で産休に入る人がいるときには、復帰前提で祝って送り出す。

そこに”死”の気配なんて微塵も感じないが、昔は本当に命がけだったらしい。

江戸の出産事情を知り、手厚い医療のサポートを受けながら、安心してお産ができる時代に生まれたことを感謝しました。

子どもの死

江戸時代では病気などで成人まで生きられない子どもが多いということは知っていたが、生きることの必死さ故、子どもが犠牲になることがあったらしい。

貧しさのために子供を捨てる親や、生活のため高賃金な乳持ち奉公に出るために自らの子を犠牲にする親の話は心が痛んだ。

今、私が子どもを失ったり離れることになったら、かなり辛いし正気ではいられないと思うが、きっと当時子どもを犠牲にせざるを得ない親も相当苦しかったろうなあと思った。

一方、子殺しをして奉公に出る未婚の女性や、乳が出ると偽り預かった子どもをほし殺ししてしまう乳母もいたらしいが、胸糞悪かった。「●ね!!!」と思った(もう亡くなってますが…)。

母乳育児を良しとするようになったのは近代の価値観

この本を読んで知った事実は、これが一番意外だったかもしれない。

実は、母乳による育児が良いと言われ出したのは、大正時代から。当時の育児書的な本や婦人雑誌で、自己犠牲を伴う授乳が女性の自己実現であることが強調されていたそうで、多くの女性が母乳育児を目指すようになったらしい。

たとえば皇太子妃殿下の御慶事を記念して発行された「愛育の本 乳児の巻(大正14年)」という本には

「母乳」こそが「衛生上の関係」からも「教育上の関係」からも「最良の栄養品」とされる。母親は、この「授乳という社会的奉仕」を(中略)「あらゆるものを犠牲に供しても」行うことが求められる。

旨の記載が。

また、多くの母に読まれた「胎教(大正2年)」の著者下田次郎は

「乳が十分に出ませんでしたから已むを得ず人工栄養にしました」などという言い訳は「不正答(ママ)な言ひ分」で、「自分の子供を育つるに必要なだけの母乳」は「必ず分泌する」

と言っていたらしい。

マジかよ…。

無理だよ、出ないよ…。余計なことを言いふらしおってorz という気分。

時代背景的に富国強兵というか、女性が家のことをして男性がお国のために働く、みたいなほうが都合が良かったのかもしれないけど、なんだか宗教みたいだし、育児を型に押し込める感じが嫌だなあと感じた。

まとめ

大学の先生が書いたということもあり、結構小難しい表現や無駄に引用があったりと周りくどい表現があった本でしたが、個人的には読んで良かったと思えた本でした。

授乳の歴史を知ることができたことや、子育てに集中することができる恵まれた環境を実感し「明日も子育てたのしもう」と思えました。

また、「育児は母がするもの」「母乳育児が絶対」という価値観は比較的近代に広められたもので、もっと前は身の回りの人々の力も借りながら子育てをしていたことを知り、自分の育児でも「こうであらねば」という型にとらわれずにもっと肩の力を抜いて子育てに向き合いたいと思いました(さっそく、忘年会のために子供を預けることを母にお願いしてきました)。

他にももっと細かく記載がされていますので、ご興味のあるかたは授乳の片手間にでも手に取ってみてはいかがでしょうか。

職場復帰のリハビリとして読書感想文をひさびさに書きました。難しかったです(10日かかった)。

おしまい。